社会不安障害Q&A
社会不安障害(SAD)に関して寄せられる“よくある質問”を
「病気のこと」「治療のこと」「お薬のこと」「ご家族からの質問」に分けてお答えしています。
病気の事
治療のこと
お薬のこと
ご家族からの質問
病気のこと
1.恥ずかしくなって顔が赤くなるのは性格なのではないですか?
赤面するだけで特に恐怖や不安を感じなければ“恥ずかしがり屋な性格”ということでよいでしょう。
社会不安障害(SAD)は、人前でのスピーチや動作、食事や文字を書く場面などに恐怖や不安を感じ、日常生活に支障が出る病気です。
赤面することが恥ずかしいと感じ、赤面することに恐怖や不安が生じている場合、また、恐怖や不安が強いため赤面するような場面を避けている場合は社会不安障害の可能性があります。
2.あがり症や赤面症、対人恐怖症は病気なのですか?
極度に緊張する場面で、恐怖や不安を感じる。そんな場面を何とかして避けようとして、生活に支障が出る。
こういった症状は、“社会不安障害(SAD)”の可能性があります。
社会不安障害(SAD)は、本人によって性格の問題と判断してしまったり、日常的な不安の一部として見過ごされる傾向があります。
しかし、これはれっきとした病気です。治療を受ければ改善することが可能です。
3.病気の原因はなんですか?
詳しいことはまだ解明されていませんが、様々な神経伝達物質が相互に関与することによって病態を形成しているものと考えられています。
社会不安障害(SAD)の方のお話を聞くと、“大勢の前であいさつする場面や、発表する場面で、自分が異常に緊張していることを自覚した”や“人前で馬鹿にされたり、恥をかいた”など、不快な体験をきっかけに自覚することが多いようです。
4.どのような場面で症状がでるのですか?
何気ない日常生活の一場面や、大勢を前にして行うスピーチの場面など、いろいろな場面で見られます。
人前で注目を浴びたり、何か話をする場面で症状が出る人が多いです。
詳しい症状については社会不安障害(SAD)の詳しい症状をご覧ください。
5.あがり症と対人恐怖症は違うの?
“あがり症”も“対人恐怖症”も、社会不安障害(SAD)の中の症状です。
昔からよく言われている“あがり症”は、「人前に出たり、スピーチをしたりすることに緊張してうまくしゃべれない。赤面する」「人前で字を書くときに震える(書痙)」などの症状です。
また、世間一般では、人と接することを嫌う人は“対人恐怖症”と認識されていますが、その症状は「初対面の人と話すときに緊張して言葉が出てこない」「人前で食べ物を食べることができない」「大勢の中で極度の緊張を感じる」などです。
社会不安障害(SAD)は、このような行動に“恐怖”を感じ、それを避けようとすることで生活や仕事に支障をきたす病気ですので、どちらも社会不安障害(SAD)の症状と言えるでしょう。
6.パニック障害と社会不安障害(SAD)は違う病気ですか?
違う病気です。
パニック障害は、突然何の理由もなく、思いもしなかった場面で、息苦しさやめまい、吐き気などに襲われ、いてもたってもいられなくなるような『パニック発作』が起こる病気です。
社会不安障害(SAD)の症状は、“突然何の理由もなく”起こりません。“思いもしなかった場面”でも起こりません。
“人前で緊張を感じるような場面”で“恐怖や不安を強く感じた結果”として症状が現れる病気です。
7.ふるえがあるのですが、これも社会不安障害(SAD)ですか?
ふるえの症状だけでは社会不安障害(SAD)と言い切ることはできません。
社会不安障害(SAD)のふるえと似た症状に、次のような病気があります。
・本態性振戦
・甲状腺機能亢進症
・パーキンソン病
・アルコール依存症
ふるえにお悩みであれば、専門医の診察を受けましょう。
治療のこと
1.治療は何科に行けば受けられますか?
社会不安障害(SAD)の診断や治療は、精神科や心療内科などで受けられます。
精神科は、うつ病や統合失調症等、認知症、アルコール依存症など、幅広く心の病気を診察します。
心療内科は、そもそも内科から分かれて発展した診療科目で、ストレスなどから心身に変調をきたした患者さんを診察します。
ですが、現代では、精神科と心療内科の区別は昔ほど明確ではなくなってきています。
社会不安障害(SAD)の場合、長期間通院する場合も多いため、通院
しやすい場所にある精神科・心療内科を選択するとよいでしょう
2.健康保険は使えますか?
もちろん、使えます。社会不安障害(SAD)は保険適応疾患です。
処方されるお薬も、健康保険を使って3割負担で受け取れます。
一般のドラッグストアなどで治療薬は販売していません。
3.どのように診断するのですか?
問診が中心です。いつごろから、どのような場面で、どういう症状があるのか、丁寧にお話をうかがっていきます。
STAIやリーボービッツの社会不安評価尺度、SADスケールなどの簡単なテストなども使っていきます。
他の疾患の除外診断のため、検査が必要なこともあります(血液検査や心電図など)。
4.治療はどんなことをしますか?
社会不安障害の治療には薬物療法と、認知行動療法があります。
詳しい治療法については社会不安障害(SAD)の治療法をご覧ください。
5.治療に入院は必要ですか?
ほとんどの場合は、入院は必要ありません。通院で治療が可能です。
ただしアルコール依存症や深刻なうつ病等の合併症を引きおこしている場合、通院では患者さん自身に苦痛が大きく不利益が生じてしまうと医師が判断した場合などでは入院が必要になるケースもあります。
6.治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
社会不安障害(SAD)という疾患に関しては、病気の重症度や個人の置かれている環境、体質などによる
個人差があるため、一概には言えません。
大まかな目安として、約6カ月~1年程度と考えてよいでしょう。
人によっては、症状が改善し、自分に自信がつき、行動がそのひとのものになり、新しい行動パターンとして確立されていくまで数年かかることもあります。
しかし、しっかり治療をした方が再発は少ないといわれています。
7.再発しますか?
治療を中断したりすると、再発率も上がってきます。 医師の指導に従えば、再発は防げますし、治る病気なのが社会不安障害(SAD)です。
8.治療を受ければ、人前に出ても緊張しなくなりますか?
社会不安障害(SAD)の治療を受けたからといって、あらゆる場面で全く緊張しなくなるわけではありません。
200人の前でスピーチする時などは、人は誰でも緊張するでしょう。
しかし、ほどよい緊張感で、その場面自体や緊張そのものを楽しめるようにはなります。
少なくとも、日常生活に支障が生じるような強い緊張と恐怖や不安は改善されます。
9.治療を受けると、性格が変わるのですか?
社会不安障害(SAD)の治療で性格が変わることはありません。
ただ、症状が治ったおかげで人前に出ることが楽しくなった、色々な人と出会うのが嬉しくなった、明るく前向きになれた、という変化が起きることはあります。
はたから見ていると、もかしたら性格が変わったように見えるかもしれません。
しかし実際は、その人が自信を回復し、可能性を広げただけのことです。
お薬に性格を変える力はありません。
10.会社や家族に病気のことや治療を受けていることを知られたくありません。
精神科や心療内科を受診しても、医療保険の書類等から診療科目や診断病名等の情報が会社に知られることはありません。ご家族も同じです。
ただ、社会不安障害(SAD)を治療していくためには、ご家族の理解や会社の協力があった方が理想的です。相談できるタイミングを見計らってご相談されることをおすすめします。
お薬のこと
1.お薬はどれくらい続けなければなりませんか?
治療の期間には個人差があります。
病気の重症度や個人の置かれている環境、体質によっても異なりますが、大体半年から1年と考えておいたらよいでしょう。
お薬を半年間服用し、減薬して治療を終了したグループと、1年程度までお薬を服用し続けたグループを比較した研究があります。
その結果、早めに治療を終了したグループの約2割がその後再発したという報告があります。
症状がなくなってきても、しばらくはお薬を飲み続けたほうがよさそうです。
その後の長い人生を考えたら、1年というお薬の期間は果たして長いでしょうか…?
2.薬を飲むことが癖になって止められなくなるのではないですか?
原則的にはそのような心配はありません。
“癖になって止められない”となることは、薬物依存といわれます。
現在、社会不安障害(SAD)の治療で使われているお薬は、医師の指示を守って適切に使用すれば、そのような状態になることはないと考えてよいでしょう。
ただ、SSRIなどの服用を自己判断で突然止めた場合に、めまい、ふらつき、脱力感、不安感、下痢などが出現することがあります。
抗不安薬の場合、頭重感、めまい、耳鳴り、ふるえ、焦燥感などが出現する可能性があります。
病気が克服できたときには、医師がご本人と相談しながら徐々にお薬を減らす手続を行います。
これにより、このような症状は現れません。
お薬は一生のみ続けなければならないものではないのです。
3.薬に頼りたくないのですが・・・
「頼る」という考え方をすると不安になりますね。「薬を上手に利用して、毎日の暮らしを充実したものにする」といった発想にしてみてはどうでしょうか。
お薬は登山をするときのストック(杖)に例えることができます。
ストックがなくても登山はできますが、険しい山道を登ることは非常に困難です。ストックがあると、無いよりは楽に登山をすることができます。周りの景色も見れるし、足を痛めることも少ないでしょう。怪我や事故を防いだりもしてくれます。
険しい山を登っている今だけ、お薬を上手に利用しながら、よりよい人生をスタートさせてみてはいかかでしょうか。
4.家族が「いつまでも薬に頼るな!」と言うのですが…
お薬で治療して症状がなくなってきても、社会不安障害(SAD)が完治したわけではありません。
しばらくはお薬をつづけることが必要です。
治療の途中でお薬の服用をやめることは、症状の再発を招く危険性があります。
ご家族の方には、今は薬によって症状がおさえられている、ということを説明してください。
抵抗がなければ、ご家族も一緒に受診していただいて、医師から説明をしてもらうのもいいでしょう。
5.長期間お薬を飲むと、脳や身体に影響はないでしょうか?
そのような科学的で客観的な事実は全くありません。
神経の薬を長く飲み続けるとぼける、と勘違いする方もおられるようですが、実際は違います。
むしろメンタル系の西洋薬などを飲み続けたほうが、免疫力を増すという報告すらあります。
ただ、お薬はあくまでもお薬ですから、安全確認のために血液検査などをして身体の様子をみていくことは大切です。定期的に血液検査なども受けましょう。
6.SSRIを他の薬と同時に飲んでも大丈夫ですか?
SSRIは飲み合わせの悪い薬が非常に少ないのですが、念には念を入れて確認することをお勧めします。
薬局で購入した市販薬を飲む前に、医師や薬剤師に確認してみてください。
他の病院やクリニックで、他の病気のお薬を処方される場合は、必ず医師に現在服用しているお薬を申し出てください。ご自分の健康を守るため、お薬手帳などを持つ習慣をつけましょう。
7.友人がSSRIを飲んでいます。緊張する場面の時、もらって飲んでもいいですか?
いけません。
個人に処方されているお薬は、その人の症状や体質、治療計画に応じて出されているものです。
ご友人には合うお薬でも、あなたに合うとは限りませんし、お薬の転用は薬事法という法律で禁止されています。
決して他人の薬を飲まないようにしてください。
また、SSRIはその場で飲んですぐ効くお薬ではなく、一定期間きちんと飲み続けることで効果を発揮するお薬です。
頓服薬として服用しても効果はありません。
8.治療をはじめて3カ月経ちました。赤面やふるえがおさまったのですが、薬をやめてもいいですか?
3カ月の治療で社会不安障害(SAD)が完治することはほとんどありません。
医師の指示に従って、きちんとお薬を飲み続けてください。
お薬の服用期間は、個人の症状によって異なるため一概に言えませんが、薬の種類によっては1年以上継続して服用することが推奨されているものもあります。
長期的な治療期間を考えてください。
自信がついたのでお薬を減らしたい、あるいは治療を卒業したい場合には、主治医と相談してください。
ご家族からの質問
1.家族はどのように接したらいいですか?
まずはご家族が社会不安障害(SAD)についての知識を身につけてください。
インターネットや書籍など、社会不安障害(SAD)関連のものが多く出ていますので、それらを参考にされるとよいでしょう。
社会不安障害(SAD)は病気であること、本人にとって緊張する場面は恐怖以外のなにものでもないこと、症状は、“気にしすぎ”“気合い”“気のもちよう”ではないことを理解してください。
そして、大変だということを受容し、共感しながらお話を聞いてあげてください。
“そんな些細なこと”と思っても、本人にとってはとても大きな重要なことです。
むやみにアドバイスをしたり、励ましたりはしないようにしましょう。
治療を迷っている場合には、ぜひ医療機関への受診を勧めてあげてください。
放置すると、どんどん自信が低下してうつの症状が出たり、緊張を紛らわそうとアルコールを利用するようになったり、脳が誤作動しだしてパニック障害を併発したりする恐れがあります。
社会不安障害(SAD)は、治療すれば治る病気です。ご家族も、それをきちんと理解してあげてください。
2.5歳の子どもがいます。人見知りで、お友達と遊べません。社会不安障害(SAD)なのでしょうか?
社会不安障害(SAD)は10代中盤で発症することの多い病気ですが、幼児で発症するケースもあります。
ですので、社会不安障害(SAD)ではないとは言い切れません。
しかし、人とのかかわりに対して抵抗が起こりやすい、違う病態である可能性もあります。
また、成長の段階としての“人見知り”である可能性もあります。
この年代のお子さんは、自分が病気である自覚がありませんので、周囲の大人が気持ちを察知してあげることが大切です。
心配であれば、地域の保健所や児童相談所、小児科などにご相談ください。
まだ数は少ないですが、児童思春期外来を行っている医療機関もあります。
3.子どもが不登校です。社会不安障害(SAD)との関係はありますか?
不登校や引きこもりは、「いじめ」や「うつ」など、さまざまな理由が考えられますが、社会不安障害(SAD)の症状があり、恐怖や不安から学校という場面を回避している可能性がないとも言い切れません。
しかし、小学生くらいの児童では、まだ上手に症状を説明できないことが多いものです。
また、思春期でも、恥ずかしがって親御さんに症状を正直に言えないこともあります。
まずはゆっくりお子さんとお話をしてみてください。
可能性として社会不安障害(SAD)が考えられるなら、親御さんから「人よりずっと強く緊張してしまう病気があるらしいよ」と病気の症状を説明してみてはいかがでしょうか。
お子さんが「それ! そうなの!!」と言うならば、一度、専門医にご相談ください。






